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ピピピピピッ!!ピピピピピッ!!!
ボゴムは朝のアラームの音で目を覚ました。
ゴシウォン(簡易宿泊施設)の天井に走るヒビを数秒間ぼんやりと見つめた後、体をひねって起き上がる。腰がぎくっと鳴ったが、彼は何もなかったように洗面を済ませ、ワイシャツのボタンを一つずつ留めていった。
「はぁ…寝坊したな…歯だけ磨いて出なきゃ。」
バッグを肩にかけて家を飛び出した。くたびれたバッグには、高校時代に使っていた剣道のキーホルダーがひとつぶら下がっていた。
あれは、孤児院の兄貴分が誕生日にこっそり買ってくれたものだった。あの頃のボゴムは剣道が大好きだった。たまたま触れただけなのに、なぜか自分にぴったり合って、唯一「自分だけのもの」だと信じていた。
だが、剣道にはお金がかかる。大会に出るには装備もレッスンも時間も必要だった。孤児院には、そんな支援は望めなかった。
結局、夢は後ろに追いやるしかなく、彼は大学入試に全力を注いだ。
奨学金をもらいながら、学費のためにバイトも何でもこなした。就活の準備も満足にできず、同年代よりも遅れて入社することになった。
今の彼は、どこにでもいる普通の会社員。名もなき中小企業の営業2課所属だ。
「パク代理、会議までにあの報告書書き直しとけ。あと、先週の取引先の件はどうなった?」
「えっ…あの…まだ返事が来てなくて—」
「だから電話しろって言ってんだろ!メールばっか打ってんじゃねぇよ。仕事する気あんのか?」
会社ではいつもこうだった。
「頑張ってるね」なんて言葉はほとんど聞いたことがなく、「なぜこれができないのか」と怒られる方が多かった。
一度でもミスをすれば、返ってくるのは同僚たちの冷たい目と上司のため息ばかり。
昼休みにひとりで屋上に上がり、コンビニ弁当を食べながらふと思った。
『…俺、ほんとに…消えちまえたらいいのに。
誰にも知られずに、
ただ静かに消えられたら。』
残業の末、ようやく帰る道。
冬の風は鋭く吹きつけていた。
歩道橋を渡っていると、なにか妙な気配を感じた。
ボゴムはゆっくりと視線を横に向けた。
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歩道橋の柵の上に、今にも落ちそうな少女がいた。
黒く長い髪、白いワンピースの裾が冷たい風に揺れている。
一歩踏み出せば、そのまま落ちてしまうかもしれない――そんな危うい位置に。
ボゴムは無意識に叫んだ。
「そ、そこっ!!何してるんですか!!!!
…早く、降りてください!!!!」
少女はゆっくりと顔をこちらに向けた。
光を失った瞳。どこか見覚えのある顔。
「…静かにして。うるさいの。」
「は?あ、あぶないから!今、何してるの!!」
「……」
「い、今はツラくても、
また幸せな日が来るって!本気で言ってる!だから…!」
「…ふふ。最後の励まし、ありがとう。
おかげで…少しだけ、心があったかくなった。」
少女はそっと目を閉じた。
そして…バランスを崩し、歩道橋の下へと傾いていった。
ボゴムは本能的に飛び出した。
「ま、待って!!!!」
とっさに手を伸ばして少女を掴んだが、力の加減を間違えて、二人ともそのまま下へと落ちていった。
都市の光が遠ざかり、耳には風の音が渦を巻いた。
全てが、スローモーションのように感じられた。
彼は目を閉じた。
『…運もツキもねぇな。
でも、もういいか。ここまで持ちこたえたこと自体が、奇跡だった。』
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その瞬間――
ドクン、ドクンと、心臓が鳴った。
喉の奥から息が弾けるようにこぼれ、バッと目を開いた。
そして彼は見た。自分を見下ろしているあの少女を。
だが彼女は、もはや白いワンピースの少女ではなかった。
美しく髪を編み、柔らかな桃色のチマチョゴリを身に纏っていた。
そして、彼にこう語りかけた。
「なにをそんなに、考え込んでおいでですか?」
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